【長編連載小説】 『こころの座標 外伝:失われた時間の旅』 (4) 第1章 老婆との邂逅—③
村を離れて半日ほど歩いただろうか。
空は曇り、陽はほとんど地上に届かず、風景は薄墨を流したような色合いに沈んでいた。
道と呼べるものはなく、乾いた土の上に獣の足跡のような凹みが続いているだけだった。
その道の端に、人影が見えた。膝を抱えて座り込む老婆である。
背は丸まり、髪は乱れて白く、衣はほつれていた。
両手で小さな壺を抱えていたが、中は空らしく、風が吹くたびに軽く音を立てていた。









