小説 『こころの座標』 (15) 第6章―⑤
太陽が高く昇ると、木々の影は縮まり、地面に淡い光の網を編み始めた。風は静かに吹き、葉の一枚一枚がまるで呼吸するように、わずかに震えていた。
空海とデカルトは、深い杉林を抜けた先の岩場に辿り着いていた。そこは谷を見下ろす断崖の縁であり、遠くに水音が響いていた。
「ここは、“時”が止まる場所です」
空海の声は、風の音に溶けるように柔らかかった。
「止まる……? 時間が?」
「いえ、“止める”のではありません。“融ける”のです。時間は直線ではなく、感じられ方なのです。観照の深まりに従って、時間も空間もその性質を変えていきます」