小説 『心の座標』(4)第2章 歩み出す理性
1)沈黙のあとに芽吹く問い
朝露が大地を潤し、草の匂いが空気に溶け込んでいた。
デカルトは霧を抜け、空海と別れたその先の道を一人り踏みしめるように歩いていた。
草原のなだらかな起伏を越え、まだ見ぬ地へと足を進めていた。
かつての彼ならば、あらゆる景色に論理を与え、法則性を見出そうとしただろう。
しかし今、彼の目に映る世界は、理性の対象ではなく共にある風景として現れていた。
朝日が差し込む。光が葉に反射し、万物が呼吸しているようだった。