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こころの座標ー外伝1

【長編連載小説】 『こころの座標 外伝:失われた時間の旅』(26)第5章 釈迦の沈黙 語られぬ答え——①

 夜の山は、すべてを包み込むように静かだった。 風はある。 だがその音は遠く、まるで空間の奥へ吸い込まれていくように消えていく。 虫の声も、葉擦れも、どこか隔てられている。 音は存在しているのに、響かない。 世界そのものが、深い呼吸の中に沈んでいるようだった。 空海は焚き火を起こさなかった。 昼に見た火。 怒りの火。 守りへ転じた火。 それらをすべて胸に収めたまま、今夜は火を持たないと決めた。
Yugen's ライフ

【長編連載小説】 『こころの座標 外伝:失われた時間の旅』(25)第4章 阿修羅の涙 涙の意味——⑥

(6)涙の意味 集落を離れた空海は、ゆるやかな尾根道を登りながら、ゆっくりと呼吸を整えていた。 夕刻の光が西の空を赤く染め、焼けた柵や崩れた壁が遠くに小さく見える。 煙はすでに薄れ、人々の声も静まりつつある。 怒りは消えていない。 だが暴走...
こころの座標ー外伝1

【長編連載小説】 『こころの座標 外伝:失われた時間の旅』(24)第4章 阿修羅の涙 火を抱く守り手——⑤

(5)火を抱く守り手 尾根を下りはじめた空海は、遠くに黒煙が立ちのぼるのを見た。風向きは穏やかであるにもかかわらず、煙はまっすぐ空へ伸びている。 ただの野焼きではない。 嫌な予感が胸をよぎった。 足を速める。 山道を抜け、低地へ出ると、荒れ...